【漫画】戦隊大失格レビュー 特撮好きは苦手だけど好きな所も多い作品

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何かと話題であった戦隊大失格という漫画を読んでみました。

とりあえず今読めているのは105話辺りまでで、完結はしてないのですが、これが複雑な気持ちになりつつも、次第におもしろいと思うようになりました。

ただし序盤はつまらないという世間の感想はたしかに合っているなぁという感じ。

これは読み進めていかないとわからない漫画です。

しかし展開の良さもあり、戦隊ものの漫画かと思いきや、どうにもそうではない感じがして色々と考察のしがいもあるので、食わず嫌いせず読んでいくと思いっきりハマってしまうかもしれません。

戦隊大失格とは?

戦隊大失格とは、五等分の花嫁でおなじみの春場ねぎ先生の作品です。

五等分の花嫁の人気はかなり高くて、ボクも知り合いから面白いからーと言われてみた口ですが、ことラブコメはそこまでハマらないタイプなせいもあり、ハマッて読んでいたワケではない。

けれどギャルゲー展開というか、一体だれが結婚するんだ?という恋愛リアリティーショー的なやり方もあったので面白くで読んでいたんですが、最後に「まさかのあの子とー!?」で紛糾。

うん。べつにこう、ボクは推し(二乃)とクッツいてほしかったけれど、なんか意外にもヒロイン感が本当に無い子とくっついたわけで、伏線回収してきた感じもふくめて「もう犯人は誰みたいなミステリーなのねなるほど」という感じ。しかし紛糾した。

という春場ねぎ先生の新作ということで出てきたのが、まさかの「戦隊ヒーロー系の漫画」だったとは。

しかも、なんか戦隊モノのガワを被ったアンチヒーローモノ。

いや、地雷すぎるよそれは、たぶんキツいんじゃないかなぁ・・・と思ってたら、アニメ化の制作発表があった辺りからTwitterでプチ炎上していたのを記憶していまう。

戦隊大失格のあらすじ

戦隊大失格のおおまかなあらすじはこう

日本ではおよそ13年前に出現したとされる怪人と、怪人討伐のために結成された組織「大戦隊」と、そのトップである竜神戦隊ドラゴンキーパーが戦い続けていた。

しかしそのうちに怪人側の幹部は討伐、および逃走した結果、残されたのは幹部が生み出した雑魚戦闘員だけ。

そんな彼等となぜだか大戦隊は契約をむすび、毎週日曜日の朝にいわゆる「八百長」の戦いを地上で行うことになった。

この「日曜決戦」はテレビでも放映され番組化されており、いわゆる日本のニチアサ戦隊ヒローモノのごとく放映されていて、日本では大人気。

その人気もあり、大戦隊とドラゴンキーパーズの人気も絶大なものとなっていた。

しかし、地球を侵略しようとしていたのに、戦隊ヒーローと八百長をする羽目となっていた戦闘員たちの中にいる「D」だけは地球侵略の野望を諦めず、長きにわたり仲間たちに八百長試合をさせ続けた大戦隊への復讐を誓って、一人地上へと降り、なんと人間の姿に変身して大戦隊へ入隊してしまう・・・というのが、本作のおおまかな流れでしょう。

戦闘員Dの魅力

ここで面白いのは、主人公は戦闘員。つまり怪人側の下っ端なわけで、けっこう弱い。

しかし「人の姿に変身できる」という能力や、不死の能力などを駆使し、結構知恵を使って相手を倒すタイプってのが良いですね。おまけに戦闘員ですから性格もネジまがっていて、卑怯上等な感じ。見ていてわりと好きなヤツです。

そんな彼だ大戦隊に入り、組織を内側から破壊させていくんですが・・・・まぁとんでもなく強い大戦隊のトップであるドラゴンキーパーを何気に「暗殺」することに成功したりとか、その活躍がもう戦闘員なんていうレベルではない。

不死の能力と小ずるさを使った実力は確実に幹部クラスか、下手するとそれより上なんですよね。

しかし物理攻撃や特殊攻撃が仕掛けられないので、一見すると弱い感じがまたいい。

おまけに人間でもないので、人間社会や生活を地上におりて学んでいく過程のカワイサなどもある。

個人的にはかなり魅力的な主人公だと感じております。

戦隊大失格がつまらないと言われるわけ

では、先に戦隊大失格がつまらないと言われている理由を考えてみましょう。

というか、実はボクもこの漫画を読み始めの頃は「なんかつまらないなぁ」と思うのと同時に、ちょっと軽い拒否反応みたいなモノすらありました。

それでも読めたのは、基本的には春場ねぎ先生の画力の高さがあったからで、それが無かったら序盤で完全に切ってるタイプの漫画でした。

ザ・ボーイズとの既視感が最初にあった

まず本作はいわゆるアンチヒーローモノ。

こういった作品でまずいちばん最初に思い出すのは、あの名作「ザ・ボーイズ」ですよね。

裏アメコミとも言われるあのドラマは本当に面白くて、元ネタになってるヒーローが明らかにアレだーとわかりつつも、ブラックユーモアとスリリングな展開、そしてアクションなどで魅せてくる傑作アンチヒロードラマです。

その影響もあってか、本作は最初「戦隊特撮版のザ・ボーイズ」なのかな?と思ったのはきっとボクだけではないはず。

しかし、本作は日本の戦隊特撮をがっつりフューチャーしており、日曜大戦、つまりニチアサみたいなことを現実でやっている世界観、これが特撮好きに割りと嫌われる理由だったりします。

ニチアサ戦隊のアンチヒーローはなんか違う感

本作の序盤あたりが苦手な理由は、この辺りはかなり「ニチアサ戦隊アンチヒーロー」な空気がバンバンに出ていることですね。

まぁ日曜大戦とかやってるし、テレビで人気が出てるし、誰がどうみてもニチアサ戦隊ヒーローを意識して、それを「実は悪いやつらなんだよ!」感を出していると感じるわけです。

ただ、非常にこれが厄介というか

戦隊ヒーローもの、悪の組織が主役・・・ある、なんかこういうの、すごいある!

というオタク達の声がどこからともなく聞こえてくるとおもったら、全部自分の声でした・・みたいなね。

そう、日本の特撮ヒーロー系漫画で、悪の組織が主役系は長年見てきてしまっているゆえに、戦隊大失格みたいな系統はわりと知っているわけです。

なので「またか・・・」と思ってしまった。

さらに、ザ・ボーイズの影響もあったのか、今までなら「普通の正義の味方」してるか「クズだけど割りと無害」だった特撮ヒーロが、簡単に仲間をヤっちまう程レベルの高いクズになってしまった。

これがニチアサ戦隊好きとしては「そんな悪く描くなよー」とちょっと思ってしまう所があるというか、ところどころ「戦隊バカにしてないか?」と思っちゃうところも多い。

特に僕が感じたのは「彼等の戦いは日曜の朝に!テレビ番組で放映してます!でも八百長です!」って所ですかね。

これがテレビ番組の中の話をしてなかったら良かったんですが、普通にニチアサ見てる側がからすると「いや八百長でも試合でもないからね!あの世界では本当にやってるからね!」という拒否反応が出ちゃう所もあります。

そして戦隊のデティールが絶妙に古い。

ちょうどゼンカイ、ドンブラ、キングオージャーと、ことごとく「なんだこの戦隊は!?」みたいな新たな戦隊が出まくってる時期に、なにかがあまりに古い戦隊をお出しされてしまい、ちょっと古くないかこれ・・・いまどきやるか・・・みたいな感じになってしまう特撮ファンも多いはず。

とくにドンブラザーズを見たあとだと、この失格な戦隊達のキャラが弱く思えてしまうのは致し方なし。

とまぁ、あとは色々あるけれど、主にこんな感じで特撮ファンからすると序盤が絶妙に受け入れられない仕上がりとなっている。

しかし、とくにニチアサ見てない人は、そんなことを気にせずみれるのでご安心を。

戦隊大失格がおもしろいのは『戦隊ゴッコ』のせい?

※以下ネタバレが含まれるので注意してください

こうして最初は「なんか苦手なやつだな・・・・」とは思いつつも、そもそもねぎ先生の絵が滅茶苦茶上手いこともあり、その点で読みすすめる僕。

あとは能力バトルとか結構好きなんで、多少ある設定の荒なんかは無視しつつ読んでいきました。

途中から物語の展開が一気にすすみ始めるのと共に、極悪と思われた大戦隊にも間違いなく正義があることがわかるし、怪人保護を訴える連中の出現や、すでに居ないとされていた怪人幹部が出現したりとドキドキのワクワク。

そして本作の最も重要と思われるキーが出現するからです。

それは、あるときからストーリー上に、もう一つの戦隊モノがあることが提示される・・・といういもの。

それが、かつてこの世界で放映されていたと言われる「竜神戦隊ドラゴンキーパー」というニチアサ戦隊特撮。

つまり、元々この世界では日曜の朝、本物の戦隊特撮番組が放映されていた。

しかし、その番組はどうやらレッドを演じていた人物が事件を起こしたせいで放送が打ち切りとなってしまった。

そして、13年前に怪人が出現し、なぜか現実世界に竜神戦隊ドラゴンキーパーを名乗る人物が現れはじめた。

しかも彼等は怪人の幹部討伐に成功していくも、すぐにでも処分できるはずだった戦闘員たちに「八百長」をさせて現実版の竜神戦隊ドラゴンキーパーを初めてしまったわけです。

さらにさらに、この怪人は人間が作り出していた可能性が浮上してきたうえ、なんと本物の竜神戦隊ドラゴンキーパーのレッドをやっていた人物の名字と、大戦隊のレッドの名字が同じ。

と、ここまで来ると誰でも予想するのが

「もしかして大戦隊って、戦隊ゴッコをガチでやってるイカレた連中なんじゃないか?」

ってことですよね?

つまり、本作にでてくる失格な大戦隊は、本物の戦隊ではない。

本物は、その世界でかつて放送していたニチアサ特撮番組。

そして大戦隊の創始者達はその視聴者、もしくは関係者。

そして、なにかが切っ掛けで怪人まで生み出したうえ、謎の超能力じみた力まで手に入れた上で、日本中を巻き込み被害者まで出す最悪の戦隊ごっこを真剣にやりはじめたイカレたマニア達だったのではないか・・・とかね?

いわばこれは、戦隊特撮逆張りというよりも、どちかというとヒーローにあこがれてヒーローじみたことをしはじめる「キックアス」とか「ゼブラーマン」とか、そっち系の戦隊ヒーロー達を悪役にしたような漫画なんですよね。

そう考えると謎のデティールの低さとか、なんか妙に古い戦隊設定だなとか、そのあたりも納得行く。彼等は本物の戦隊じゃないと思うと、なおのこと。

つまり、戦隊大失格はニチアサ戦隊のパロディというよりも、戦隊ゴッコのパロディであるわけで、特に現実のニチアサとは関係がない・・・というか、関係があるのは、かつて子供の頃に特撮を見て、戦隊ごっこをしていた子どもたちの方だと感じました。

戦隊ゴッコで怪人役をやった記憶を思い出す本作

本作を見ながら、うっすらと感じていたのは「怪人」という存在が、妙に理不尽に晒される存在として描かれていることです。

確かに、ザ・ボーイズでもそうでしたが、圧倒的な力と権力を持つ正義のヒーローが悪事をしたところで、もみ消され、悪びれた態度もみえず、社会的にはなんら問題ない。

そういう存在に立ち向かうべく、力なき悪者が戦う・・・まぁ正義の一つのあり方みたいなものを描いていくわけです。

しかしそれを思うと、本作はそれを「怪人」と「理不尽な扱いを受けた人物」をかなり同じレイヤーで描いている箇所が多いんですが、戦隊で、怪人、理不尽な扱いというと、僕はまっさきに子供の頃にやっていた戦隊ゴッコの怪人役を思い浮かべるわけです。

ところで、戦隊ゴッコと仮面ライダーごっこの大きな違いは何かといいますと、それは「一対多」になるか「多対一」になるかの違いです。

仮面ライダーごっこでは、多数の戦闘員や敵幹部に一人立ち向かう孤高のヒーロー感が強いので、当然一人で敵役の子と戦うことになります。

しかしみんなライダー役をやりたいので、ライダー3人とかになりますけどね。

一方で、戦隊ごっこは5人のヒーロー役と、一人の敵役というのがお決まりでした。

そもそも戦闘員役の子とかまで集められませんからね、だいたい戦隊ごっこなれば、5対1がお決まりですよ。

このとき、怪人になりたがっていた子供が僕でございまして。

やっぱり5対1でボコボコにするのはなんか卑怯な気がしましたし、やる気が出るのは怪人になったときのほう。

おりゃー怪人だぞー!といって大暴れしながら、結局追い詰められてヤラれちゃうんですが、楽しかったのは怪人になったときですね。とにかく暴れられるんです。

それに、5対1で卑怯なことしてくるやつのほうが悪いだろ!って話で、怪人だけど謎の正義の心が宿るってのも、子供の戦隊ゴッコならではの現象かもしれません。

けど現実は違うんですよね。

めちゃくちゃ強い怪人なんかいない。数にまさる力はなく、一対多になれば、その一こそが不気味で、排除すべき、もしくは見てみぬふりをすべき存在になるのがこの世の正義みたいなもの。それこそが社会を維持しているのだから。子供の戦隊ごっこにみたいにはいきません。誰だって、怪人役にはなりたくない。

けれども、なんの因果か、運悪く怪人側にまわった人間は、いわば孤高のヒーローとして暴れる役割でもあって、社会の理不尽に潰されそうになる人々のために戦っていたりもする。怪人達の正義のヒーローとして。

けれど、それもやり方を間違えれば、ただの恐るべき悪の怪人となるだけ。

そんな複雑な正義と悪の世界を生きているのが、イカレた戦隊ゴッコをしている戦隊や、仲間でもあるが暴走する怪人の幹部にも立ち向かう、弱くてずる賢い戦闘員Dであり、彼を通して

「ああ、正義ってなんだろう?」

と考えるようなお話が、この戦隊大失格なのかもしれません。

そしてこれは子供の頃に戦隊ゴッコをした時に「怪人役」をっやった事のある人。

そして、社会で、学校で、何か自分は怪人かもしれないと思ったり、そんな扱いを受けたことがあったりする人におすすめしたい漫画だなと思いました。

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