未来世紀SHIBUYAの感想【HULU】

配信ドラマ

白石晃士監督のHULUオリジナルドラマ「未来世紀SHIBUYA」の感想です。

しかしもう、楽しいドラマですね。

元々白石監督のファンであり、じつはHULUに入ったのも「白石監督がSFドラマを撮っただと!?」未来世紀SHIBUYAを見るためだけに入ってましたからね。

そうして期待しながら見た本作ですが、これがすごく楽しい。

架空のYouTuber、いやこの世界ではweTuberと呼ばれる動画配信者「正義マン」が2036年の未来のディストピアと化した世界を舞台にコメディたっちに活躍するPOV形式ドラマなんですが、これはぜひ見てもらいたい。とくにPOV好きの方であったり、SFの不思議な話が好きだったりする方にはピッタリ。

そして白石監督の代表作と言っても良い「コワすぎ!」が好きな方もおすすめです。

未来世SHIBUYAとは?

出演:金子大地 醍醐虎汰朗 篠原悠伸 Hina / 藤森慎吾 宇野祥平

監督:白石晃士

脚本:保坂大輔/白石晃士

音楽:牧戸太郎 主題歌:Dios「ダークルーム」

【未来世紀SHIBUYAのあらすじ】

本作の舞台は2036年の東京。

この世界の日本では貧富の差が激しくなっており、貧困層である「不良国民」と富裕層である「高級国民」に分かれています。

そして高級国民の証とも言われるのが、Bチップと言われる機械。

これを体に入れることにより高度な頭脳や高い身体能力を発揮できるという優れもの。

そして、このBチップ(ブレインチップ)を手に入れて不良国民から高級国民を目指すべく、weTuber「正義マン」となったミツル(ミツルマン)とカケル(カケルマン)、そして撮影のタナカが様々なオバカな活動をしつつ出会う様々なSF事件、そして国家レベルの陰謀にまで巻き込まれるハチャメチャなフェイク・ドキュメンタリーです。

で、本作の主役となるのがミツルとカケルの二人。

裏渋谷で孤児として育ち、カネもショウライもミライもない彼らがただひたすらに「バカパワー!」と叫びながら、ノリとイキオイで正義の味方的?なYoutubu活動をしていくのが魅力ですね。

いやほんとうに、とにかくキャラが良い。

とにかく頭が悪いけれども、ひたすら人が良く心優しいミツルと、なんだかんだマトモなことをいうけど勢いが良すぎて突っ走り気味でヤンチャなカケルです。

そして、彼らが配信活動で出会うのが「マネキンオジサン」という不思議なおじさん。

白石監督作品ではおなじみの宇野祥平さんが演じるこのヤバいおじさんがまたスゴイキャラでして、とにかく叫んで暴れてキチキチ。

そんなマネキンオジサンでバズったミツルとカケルだったのですが、なんとそのオジサンが爆発!

いやまて!おじさんなんで爆発した!?

というツッコミと同時におしよせる悲しみ。

頭はおかしいけど、どこか憎めないマネキンオジサンが亡くなったことを悲しみ、ついにwetuber活動も停止し引退しようとした時、正義マンたちに仕事の依頼がやってくる・・・・

というのが本作の簡単なあらすじですね。

コレ以降、正義マンには色んな仕事の依頼がきて、それを解決していく中で、コメディたっちながらブラックな近未来社会の闇に触れていくという内容です。

とにかく本作はキャラがバグいです

さて、この未来世紀ブラジルのパロディタイトルである「未来世紀SHIBUYA」ですが、このドラマ一番のお気に入りはなんといってもキャラのバグさですね。本当にバグいです。

あ、ちなみにこの「バグい」は2036年の未来ではやっている言葉でございます。

でまぁバグい登場人物達の中でも、やはりマネキンオジサンのバグさは異常というか。

こうなんというか、白石監督作品の宇野祥平さんのキャラの中でもずば抜けてバグい。

なんせ一度たりともマトモに喋らず、ひたすら奇声をあげ、数字を唱え、突如として暴力をふるってくるわけでスゴイことになっていて、一回みたら一生忘れられない。もう宇野さんみたらどうやっても「マネキンオジサン」を思い出してしまうレベルです。

他にも、なぜか出ているオリラジの藤森さんが奇妙な和風衣装に派手なサングラスをした「ゴザル」系の口調の人気wetubreという、中身なく絵面がひたすらバグいキャラでやたら印象に残りますね。

そして本作にも登場している工藤Dこと大迫さん。

やはり白石監督作品なので出るかなーと思ってたらやっぱり出てきたんですが。

バーチャル◯◯◯が趣味の中華料理屋の店主という、これまたバグいキャラで本当に意味がわからなくて面白いし、しかも唐突にカケルとバーチャル◯◯◯しだす展開が笑えて仕方ない。

なんというか、男同士でバーチャルマシーンでアレするっていう設定、ブラックミラーでかつで出てきて話題になってたんで覚えてるんですが、それの最高に安い番の変態キャラで思わず笑っちゃいましたよね。

そしてなにより、本作は主人公であるミツルとカケルのキャラクターがいい感じすぎて、なんか本当に絶妙なフィクション具合で最高です。

まず、バカなことをやる体当たり系YouTuberっぽい感じなんですが、二人そろって孤児なうえに本当に頭が悪いあたりが良い。絶妙に居ないタイプの感じ。いそうだけど居ない。そこがタマらないですね。

そして、ふたりとも頭は悪いけれども心は優しいところがにじみ出ていて、思わず応援したくなっちゃう感じが絶妙なリアリティがあるというか。

もしこんな配信者がいたら、つい応援しちゃうだろうなーって具合の良いラインをついて、僕もやっぱり見ている内に正義マンのファンになってしまい、ついつい応援してしまいました。マジでバグかったです。

オムニバス系SFをPOVでやってる面白さ

さて、未来世紀SHIBUYAは大変面白い。

なんか全然話題にのぼらないのは、本作はHULUオリジナル作品であったのが悪かったりとか、白石監督ファンはホラー好きが多いのが原因だとか、まぁ色々あるかもしれません。

しかし、SF好きの僕から見ても大変面白いし「あーこういうの好きだなぁ」という話がいくつもあるというか、なんか

「ブラックミラーみたいなオムニバス系SFをコメディたっちにやってるフェイク・ドキュメンタリー」

だと思ってもらえると一番わかりやすいかもしれません。

なので各回ごとに異なるSFストーリーがあるのですが、僕が一番好きなのは、やっぱりAI彼女の話ですね。

ゴーグルを付けると見えるAIの彼女と結婚すると言う息子をどうにかしてほしい親が、正義マンたちに依頼する話なんですが、ここがPOVを上手く使ってるというか。

他人からは見えないAIゴーグルの彼女だけれども、ゴーグルを通すと見える演出が大変リアリティがあったし、なんか見てるこっちが本当に「こりゃAI彼女にハマるわけだよ!」という説得感がスゴイんです。

しかもそれをYouTuberの企画を通して描かれるので、絶妙なリアリティとチープさが伴っており、見ていてとても「ありえる」と思っちゃうんですよね。

しかも、物語のオチ的にも完璧だし、この回は構成もすごいしっかりしていて、流れも素晴らしい。

白石監督、やっぱSFもっと撮ってくださいよと唸らずには居られない・・・あれ、でも白石監督ってホラーだけどSF展開(コズミックホラー)やってるから、あれ実質SFなのかな?

とまぁそんな感じでSFとして面白い話がある一方で、なぜだか「コワすぎ!」を完全に意識したオカルトっぽい回も存在していて、そちらは「さすが感」が出てて好きです。

そしてラスト付近になると、突如として伏線回収をしつつ巨大な陰謀にスケールアップしていく展開が「うわー白石監督だなー」と思わず笑ってしまうというか、好き、こういうの感。

そして最後の展開もふくめて、めちゃくちゃ満足というか、この頃シリアスなSFばっかり見てた僕からしたら「こういうのが見たかったんですよ!」っていう気持ちになりましたよ。

Youtubu系POVとしてのこだわりを感じる演出

未来世紀SHIBUYAは未来のYouTuber系POV。

ここが結構リアルというか、未来なんだけど現実のYoutubu見てるみたいな気持ちにすごくなりました。

字幕のテロップやたらあるとか、効果音ガンガン入れてくるとか、絶妙にウザいテンションとか、うわーあるあるー!って感じでして、よく研究されているなーと思ったり。

あと、あまりに絶妙にYoutubuすぎた弊害なのか、ちょっとスキップしたくなる時が本当にある。

ほら、みなさんもYoutubuって見てて「あここ飛ばすかー」みたいな気持ちになる時けっこうあると思うんですが、本作もあまりにYoutubuしすぎてて、気がついたら飛ばしてしまい「いやまて!これドラマだぞ!」とハっとした瞬間がありましたね。監督ちょっとやりすぎです。

ただ、そのわりに本作の公開と同時期に出来た白石監督のYoutubuチャンネルは、なぜか映画紹介を腹筋ローラーをやりながらする「そんなYoutubu無いよ」みたいなことをやっています・・・白石監督、研究の成果をなぜ生かさないんですか!

そして本作のYoutubu形式POV最大の見どころとも言うべき生配信の場面。

これがまたリアルでして、コメント欄はまさに「あーよくみるコメ欄だな」って感じだし、2036年も人類は適当なコトしかコメントしてないのが面白くて笑っちゃいましたしね。

しかし未来の配信なので、色んなガジェットが増えていたり、生配信が次第におかしなことになっていく演出とかも秀逸で、なにげに背筋がゾクゾクしました。

それと、ほんとうにワンカットのシーンが多いんですけど、台詞よく覚えてるよなーと感嘆。

ロングカット好きの人は結構相性いいですよね、こういうの。

なぜか感じてしまうヒーロー特撮感

本作ではなぜか妙に「特撮ヒーロー」感を感じるというか、こう、絶妙に戦隊特撮のノリを感じ取ってしまった人もいるでしょう。

実は僕もその一人でして「正義マン」のテンションや決めポーズ、事件を解決していく流れとかが、ほんわかと戦隊ヒーローの空気をまとっているんですね。

さらにやたら「正義」っていう話とか出てくるし、最終的にもそれが主題で、なにかヒーロードラマを感じるというか・・・

しかも作中でもミツルとカケルが特撮ヒーロー好きという設定だったり、戦隊のTシャツを貰えると知ってテンション上がってたりと、これはもしかして白石監督が撮った特撮ヒーロー映画なんじゃないかと思ってしまったりする。衣装も戦隊にいそうだし、なんかBチップを入れるといきなり強くなってバトルしはじめたりする所とかもヒーローっぽい。

てなわけで、これを見ているとぜひとも白石監督には特撮ヒーローを主題にしたモキュメンタリーなんか撮ってもらったら絶対面白いのではないだろうか?とか思っちゃったのは僕だけでは無いかもしれません。

拘りすぎて本当に退屈な場面がある

えーとても面白くてお気に入りの本作なので、ぜひとも見たことない人には見て欲しいと布教欲バンバンなのですが、ただ一つほんとうに見る時に気をつけてもらいたいのが。

「Youtubuを完パロしすぎたせいで退屈な所がある」

っていう、ただこの一点ですね。

というのも、普通のドラマと違って生配信の場面とか、Youtubuの動画っぽい画面を徹底して意識しすぎているあまり、ぜんぜん盛り上がらない所とか、絶妙に微妙な空気感を出してくるところとか、ライトすぎる演出とか、生配信の風景とかが「あーYoutubuだなぁ」がすごいあるんですよ。

このせいで、ほんとうにYoutubu見ている気持ちにになっちゃって「ちょっとスキップしようかな」って思っちゃう気持ちが本当に出てきてしまう。

とくに僕は、リアルにいる企画系のYoutubu自体がそこまで好きじゃなくて、むしろ一番好きなのは正義マンっていうレベルなんで、なかなか集中力を維持できない時があるんです。

ただ、それはもうしょうがない。

だってノリとかテンポとかまで完全にYoutubuであって、すごい研究してこれ作ってるせいでもあるんですよね。

あだ、後半になってくると結構YouTuberノリが封印されていって、サスペンス的な要素が強まっていくこともあるんで、前半だけで切らずに、ぜひとも中盤まで見て欲しい。

いや、ぜひともバグって欲しいと思います。

未来世紀SHIBUYAはHULUにて視聴可能です

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